リネン糸ができるまで ソフトで毛羽立ちが少なく、しなやかな風合いのリネン糸。 リネンの原草フラックスは高温多湿に弱く、寒冷地でしか生育しません。主にフランス、ベルギー、 オランダなどヨーロッパを中心に栽培され、日本では札幌以北で育てることができます。連作障害が起こりやすいため、6~7年の輪作にします。 レッティング(浸漬) 靭皮部と表皮、木質とを分離しやすくするため、原草を発酵させます。この工程をレッティングと言い、次の2通りの方法があります。A .デュー・レッティング(dew retting)刈り取った原草をそのまま畑に寝かせ、夜露を利用して発酵させます。B .ウォーター・レッティング(water retting)原草を水に浸けて発酵させます。現在はAのデュー・レッティングが主流です。 スカッチング(製線) 麻打ち機でたたいて繊維をほぐし、外側の表皮と木質部を除去して内側の靭皮部を取り出します。このとき、ペクチン質などを適度に残して単繊維がバラバラにならないように注意して行います。ここまでは栽培地のフランスで行い、以降は紡績工場(中国)での作業となります。 ハックリング(櫛梳) 取り出した繊維を梳いて不純物を取り除き、同時に長い繊維(一亜)と短い繊維(二亜)に分別します。一亜は中番手、細番手の糸に、二亜は太番手の糸に使います。こうして出来上がった繊維束をハックルドスライバーと言います。※番手=糸の太さ ドローイング(練条) ハックルドスライバーを仕分け均一化し、不純物を取り除いて平行に並べます。繊維をくし削って残った繊維の束をまっすぐ並べ、1本に引き伸ばす作業を何度か繰り返し、色や太さのムラをなくしていきます。練条後の繊維束は練条スライバーと言います。 ロービング(粗紡) 練条スライバーを平行に揃えながらさらに引き伸ばし、少し撚りをかけて粗糸を作ります。その後、生成 (亜麻色)の糸を作る場合は粗糸を湯通しし、晒にしたい場合は晒します。このとき、漂白の度合いによって晒の白度を調整します。 スピニング(精紡) 粗糸を精紡機にかけ、潤紡(湿式紡績、wet spinning)を用いて紡績します。この潤紡は、お湯をかけてペクチンを溶かしながら紡績する方法です。※紡績方法は、ほかにも乾紡(乾式紡績・dry spinning)とギル紡(粗紡の工程を省いて紡績する方法)がありますが、リネンは潤紡を用います。 ワインディング(糸巻) 糸を乾燥後、ワインダー機でチーズ状に糸を巻き上げて完成です。 topへ戻る ラミー糸ができるまで ハリ・コシがあり、白く絹のような光沢のラミー糸。 ラミーは温暖な気候と湿潤な土地、深い耕土に適する多年生の植物で、中国の南部(四川省、湖南省)やフィリピンなどで栽培されています。草丈は1.0〜2.5mにまで伸び、群落を作って繁茂し、深く根を張ります。 蒸解 最初は蒸解です。ラミーの茎の束を薬品の入った高温の釜に入れ、表皮や木質、ペクチン質などを完全に取り除き、靭皮から必要な繊維を取り出します。その後、取り出した繊維をほぐし、遠心分離機、乾燥機にかけます。こうしてできた繊維束を乾綿と呼びます。 コーミング(精梳) 乾綿をくし削って平行に伸ばし、短繊維(ノイル)やネップ、雑物を取り除きコーマスライバーを作ります。※繊維の質、仕上がりの糸番手などにより、カーミングを行うこともあります。綿糸の場合、カーミングのみのカード糸と、カード後にコーマを通したコーマ糸があります。 ドローイング(練条) コーマスライバーを仕分け均一化し、不純物を取り除いて平行に並べます。繊維を櫛梳り、残った繊維の束をまっすぐ並べ1本に引き伸ばす作業を何度か繰り返し、色や太さのムラをなくしていきます。練条後の繊維束は練条スライバーと言います。 ロービング(粗紡) 練条スライバーを粗紡機で適当の細さに引き伸ばし、少し撚りをかけて粗糸を作ります。 スピニング(精紡) 粗糸を精紡機にかけ、糸の細さまで引き伸ばしながら適当の撚りをかけて単糸として完成します。ラミーの紡績方法は乾紡(乾式紡績、dry spinning)です。※ポリエステルや羊毛などの他繊維との混紡糸を作る場合はトウ紡績などを用います。 ワインディング(糸巻) ワインダー機で余分な節やネップを取り除きながら、コーンに糸を巻き上げて完成です。 topへ戻る 麻織物のできるまで 近江の麻の、繊細な織りの工程の動画をご覧いただけます。 topへ戻る 近江ちぢみとは 清涼感ある上質な「しぼ」加工品 しぼ取り板を使って手で生地を揉み込み、「しぼ」を形成した織物のことを「ちぢみ」と言います。平織の麻 (ラミー)生地のちぢみを「麻ちぢみ」と言い、近江で生産されるものを「近江ちぢみ」と呼んでいます。 伝統の技 緯糸に強撚糸を使った織物を手もみ作業すると撚りが戻り、「しぼ」が生まれます。これにより空気を 含んだ爽やかな肌触りの生地に仕上がります。近江ちぢみは、染めた糸を使って織った「先染め」が特徴で、絣やよろけといったこの地域特有の鮮やかな色合いを生み出します。 ※現在、近江ちぢみ加工は機械化されていますが、滋賀県で生産されたちぢみ加工の織物及び、それら織物で生産された製品は「近江ちぢみ」として、地域団体商標に登録されています。 竿干し 手もみ加工した生地を竹竿にぶらさげて自然乾燥させます。 蒟蒻糊付け ラミー糸は毛羽立ちが多く糸が切れやすいため、あらかじめ糸に糊を付けてから織り上げます。天然の蒟蒻芋が原料の蒟蒻糊の糸を使用すると、通常の糊付け糸に比べシャリ感が増し、光沢のある上品な織物に仕上がります。食用の蒟蒻芋を使用しますので、安全で環境に優しい素材です。 近江ちぢみの種類 先染め絣 絣…糸の色を部分的に染め分け、かすれたような色合いを生み出します。 よろけ織り よろけ…経糸の密度を変化させ、波型模様を表現します。 topへ戻る